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町家発ほんまもんの会

町家発ほんまもんの会

さてさて、お話の続きです。

今回の会のお題は「特殊道具の仕立て方 番外編!」ということで、「お江戸の鍛冶、上方の鍛冶 ー江戸後期から昭和初期の鍛冶ー」というのがサブテーマ。
「鍛冶」というのは金属を鍛錬して製品を作る、あるいはそれに携わる職人さんのことです。

会場は額縁を製造されている方の「ハチマン工房」。
職人さんらしい道具が揃えられています。



この道具棚は開閉式になっています。



なんだか、ワクワクしますね。
それらの道具で作られた作品。



額縁というのは、その中の絵画や書をもっとも表現できるという観点からデザインされますが、決して主役になることはなく、でも、しっかりと存在を主張していて、まるで人間の生き方のお手本のようです。

講師は宮殿師の職人さんで、お仕事柄、貴重な道具を集めておられます。







今回は「上方の鍛冶」ということで、三木(兵庫県三木市)と大阪で製造された鑿や鉋を紹介していただきました。
大阪の鍛冶は堺刃物とかで有名なのでうなづけるんですが三木は意外でした。
で、さっそく調べてみると…。
播州三木は鍛冶神・天目一箇月命(あめのまひとつのかみ)のゆかりの地であり、古代よりそれを祖神とする大和鍛冶が盛んであったらしい。それと「肥後守(ひごのかみ)」は、


(資料写真)

三木市の永尾駒製作所製造の登録商標らしい。

食いついたのは刻印です。






「源兵衛」は製造者の刻印で、他の刻印は問屋のものだそうです。

「べた亀」はかわいらしい亀の文様。



大阪の鍛冶「梅一」の刻印ですが梅ならば花弁は5枚のはずが6枚あります。
どうやら上下さかさまに打って打ち直したので、二重打ちになっているそうです。
好きやなぁ~、こんなん。



同じく「梅一」の鉋歯。
謡の文句が刻まれています。



「東北(とうぼく)」。
東北(とうほく)ではなく京都にある東北院(とうぼくいん)に、和泉式部が愛でた「軒端の梅」が謡われている。

こちらは「田村」。



「春宵一刻あたい千金」というから桜の時期。

講師の方の推測によると「ここに『高砂』が加わって三部作になっているのではないか。『高砂』は一月、『東北』は二月、『田村』は三月と続きます。」
ほうほう、奥深いお話です。
単なる「道具」というより「工芸品」と呼べる品ですね。
四天王寺の古道具市なんかで探し出すらしいのですが、「銘によると片手(50000円也)くらいするものが、ほんの100円とか200円とかで売られていたりするんですよ。」

大阪の鍛冶「善作」には諸説さまざまあって、代々、港区で仕事をしていたらしい。



重次郎は初代あるいは二代喜次郎の次男で、ある時期、長男の徳太郎と仲が悪かったとか。その「徳太郎」の出来が悪くクレームが多くて、差別化するために「重次郎」の刻印を打ったとか。





参加者の多くは大工さんなんですが、講師の方が「師匠」と呼ぶ鍛冶職人さんが来られていて、ディープなお話になりました。
「刃物の研ぎはどういうふうにするんですか?」
「あんたはどうやって研いでんの?」
「『かえり』が出るくらい。」
「そこまで研いだらアカンねん。力で研ぐんやないんです。」
「ほうほう。」
「砥石の下に雑巾を敷く。」
「そんなんしたら、砥石が安定しませんやん。」
「その砥石がぐらつかん程度の力具合で研いでいくんです。それで一週間くらい研いだら、鋼の模様が浮かび上がってくる。」
「『研ぎ』と『研磨』は違うんです。」
……。
アカン、ついていかれへん。
そんな職人さんのディープなお話が飛び交う中で、<す>はマヌケな質問をしてしまったのですね。
「包丁も同じですか?」

なんとなく納得できたのが、
「よく鍛錬された刃物は、硬いところと柔らかいところが均一になっている。」
ということ。
鋼は鍛錬すると炭素が混じって硬くなりますが、これは分子レベルで硬いところ(高炭素)と柔らかいところ(低炭素)がうまい具合に混じりあっているということが推測されます。中途半端に鍛錬された刃物はこれが均一でなく、ある日突然、硬いところがボロッとなってしまうそうです。
これは他で伺った話なのですが、刃先はまっすぐなようで、実は小さなギザギザかついている。この方がよく切れるらしいです。
「切る」ということを論じると一冊の本が書けるくらい奥深いメカニズムがあります。ここから先は<す>の推測ですが、まっすぐな刃物は線当たりします。対して、小さなギザギザがついた刃物は点当たりする。つまり、力が点に集中して(それも分子レベルで)「よく切れる」ということになるかと思うんですね。
「研ぎ」と「研磨」の違いもその辺にあるような気がします。

刀鍛冶の銘のような「秀盛」。



お開きのあとも、まだまだ深くて熱いお話が続きます。



「お話はいかがでしたか?」
「刻印フェチとしては、興味深いお話でした。」
「あはは~、レンガではなかったですけどね。」

おやつ(手作りたまごボーロ、宇治茶だんご、大きな大福)も美味しくいただきましたとさ。












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